教室便り1008号「中学生までの半年を無駄に過ごしますか?」
小学6年生のみなさん
中学生までの半年を無駄に過ごしますか?
中学校までの半年の過ごし方で、中学3年間の勉強の出来が大きく変わります。小学生のテストで90点以上をキープしているから、大丈夫と安心されていないでしょうか。中学に入学されるまでに中学生の学習準備を行わないと、お子さまが大変苦労されます。それは小学生と中学生では要求される能力が違うからです。小学生のテストで90点以上取れたとしても、中学生では平均点を取れるとは限りません。
小学生の学習は、生活に密着しているため、学習内容が理解しやすく、理解すれば問題も簡単に解けます。例えば「速さ」の問題。速さの問題は難しいとされていますが、自宅から名古屋に向かうことを考えると、「何時間で到着した」、「標識に何キロと書いてあった」と生活に密着しているため、理解しやすく、数回の練習で問題も解けるようになります。つまり小学生では「理解する=解ける」で学習できます。
しかし、中学生では生活に密着していない問題を多く扱うため、理解が困難になります。例えば、中学生で最初に学習する「正負の計算」。「正負の計算」では「-5×(-3)=15」と学習します。ですが、マイナス(-)とマイナス(-)をかけるとどうしてプラス(+)になるかを生活の中で体験できないため、理解が難しくなります。それでも、10くらいの計算パターンを覚えれば「正負の計算」は解けるようになります。
ですが、次に学習する「文字式」が問題です。「文字式」では、理解しにくい「係数、項、次数…」という生活に密着していない語句を覚える必要があります。しかも「正負の計算」の何倍もの計算パターンを覚えなくては、「文字式」を解くことはできません。つまり中学生では「理解する≠解ける」になります。
このため、中学生では「解くことによって、理解をすすめる能力」が要求されています。このことを理解しないまま中学生を迎えると、お子さまが大変苦労することになります。
そこで中学生までの半年の間に、学習準備を行うことが大事になってきます。またこの半年がお子さまの学力を上げるチャンスでもあります。それはもうすぐ中学生という意識も持っているため、以前よりやる気が出しやすいからです。この半年で中学生の学習に必要な能力を身につけることができれば、中学生でも90点以上をキープできます。そのために次の学習準備を行って下さい。1日20分~30分からでもできる準備ですので、是非行って下さい。
① 中学生になっても余裕を持って計算をできるようにしよう。
「正負の計算」では完璧に理解する前に、計算パターンもたくさん覚えなくてはいけないため、お子さまは余裕をなくすことが多くなります。そのために小学生で解けていた計算問題も間違えてしまい、点数を落としてしまうことも多くなります。そのため中学生までに基礎計算力をしっかり身につけておく必要があります。
効率良く楽に身につけるために、次の方法をおすすめします。
- 市販の問題集でかまいませんので、分数計算の問題をご用意下さい。
- 初日はその問題集を使い、時間を計りながら10問解いて下さい。問題を解くときには、速く正確に解くことを意識しながら、解いて下さい。解き終わったら、採点を行った後に、間違いを直して下さい。
III. 次の日に初日に解いた10問に、さらに10問付け加え、合計20問解いて下さい。このとき、10問ずつ時間を計って下さい。そして解き終わったら、採点を行った後に、間違いを直して下さい。
- この方法を繰り返し、50問まで増やしていきます。間違いが多く、同じ問題で前日より時間がかかるようであれば、問題を増やさずに行って下さい。決して無理に問題を増やしてはいけません。
- 50問を間違いなく、時間も以前より速くできるようになれば、最初に学習した10問をなくし、新規に10問を加え、合計50問を解いて下さい。
- この方法を足し算、引き算、掛け算、割り算を含む分数計算が、間違いがなく、すらすらと解けるようになるまで行って下さい。
これができれば、中学生で必要な基礎計算力が身につきます。さらに作業力(同じ時間でたくさんできる力)と定着力も自然と身につき、お子さまの能力もアップします。
② 生活に密着していない語句を簡単に覚えよう。
英単語を使って覚える訓練を行い、中学生への学習準備を行いましょう。英単語は読めば「ドック」、「キャット」と生活に密着していますが、「dog」、「cat」のようなスペルは生活になじみがありません。そのため生活に密着していない語句に慣れるよい訓練になります。
- 市販の英単語帳を用意します。英単語とその意味がのっているテキストをご用意下さい。
- 最初に英単語とその意味を5個覚えて、テストして下さい。5個全てが一度に覚えるまで、テストして下さい。
III. 次の日に新しい英単語を5個覚えて、全てを覚えるまでテストして下さい。そして、初日の5個とあわせて10個の英単語を、全て覚えるまでテストをして下さい。
- 前日に覚えた10個の英単語のテストを行って下さい。もし10個全てを覚えてなければ、英単語を増やさず、もう一度完璧に覚えるまでテストして下さい。このときに焦らずに増やさないことが大切です。もし10個全てを覚えていれば、また5個増やして下さい。これを40個まで増やして、全問正解できるようにして下さい。
- 40個が全て覚えられれば、初日に覚えた5個を減らした上で、新しい単語を5個増やして下さい。
これができれば、中学生で必要な暗記力と定着力が自然と身につき、お子さまの能力がアップします。
③ 自分をコントロールしよう。
いくら能力が高くても中学校の学習を乗り切るためには、自分の心をコントロールできなくてはいけません。「難しい問題だからやりたくない」、「疲れているからやりたくない」、という自分の心と戦う必要があります。もし自分の心に負けてしまえば、本来取れるはずだった90点以上の点数も取ることができません。そこで自分をコントロールすること、つまりセルフコントロール力を身につける必要があります。身につけるための第一歩としては、「何か自分で決めて、実行すること=有言実行」が最適です。
- まずは学習日を決めましょう。例えば月曜日は英語、水曜日は算数と学習日を決めます。このときに時間で学習をしようと決めると挫折することが多いので、何かの行動の後か前で決めて下さい。「…の夕食を食べてから」、「お風呂に入る前」などですと、実施しやすいです。生活の中に組み込むことが、学習習慣を身につけるよい方法です。
- そして、その日の学習目標を決めましょう。少し頑張ればできる目標を立てることが大事です。例えば、 「姿勢よく座る」、「何分で解答する」、「何枚学習する」などから始めることをおすすめします。
①②③の学習ができれば、中学生までに学習準備が整い、作業力・定着力・暗記力・セルフコントロール力がアップし、より効率良く、効果的に学習ができるようになります。是非、実践してみて下さい。